2025年6月第3回定例会 一般質問

6月定例会において一般質問を行いました。

日田の未来を拓く「二地域居住」と「文化芸術振興」への取り組み
先日の日田市議会一般質問では、人口減少が進む日田市が持続可能な発展を遂げるために不可欠な、「二地域居住」と「文化芸術の振興」の二つのテーマについて、市の見解と今後の具体的な取り組みを質しました。

二地域居住:人口減少対策と新たな活力創出への期待
 私はまず、近年注目される二地域居住が、深刻化する日田市の人口減少対策、特に若年層の流出阻止に有効な手段であることを訴えました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機にテレワークが普及し、都市部と地方を行き来する二地域居住は、個人のライフスタイルの多様化だけでなく、東京一極集中の是正、地方創生、そして関係人口を創出する上で極めて重要な方策です。日田市はこれまでも移住定住に力を入れ、県内上位の移住者数を誇りますが、総人口の減少は続いています。この状況において、二地域居住は日田市に新たな人の流れと活力を呼び込む大きな可能性を秘めています。
 この点に関して、市側からは、国が検討中の「ふるさと住民登録制度」など新たな動向を注視し、具体的な施策検討に取り組むという前向きな姿勢が示されました。私は、二地域居住を検討する多くの方が利用を考える空き家改修の課題として、合併処理浄化槽の補助制度が住民票を日田市に置いている方に限定される点を指摘し、住民票を直ちに移すことが難しい二地域居住者でも利用できるよう検討の余地はないか質問しました。市は、担当部署との情報共有を図り、国や他市の動向を注視しながら検討していく方針を示しました。
 さらに、二地域居住を魅力的なものにするためには、住環境だけでなく、その地域の体験や活動が重要だと強調しました。日田市の豊かな森林資源、農業、歴史、文化、伝統工芸といった多様な資源を生かした林業体験、農業ボランティア、地域課題解決型プロジェクトへの参加など、地域との接点や「なりわい」を生み出す機会の創出について質しました。市は、林業分野で起業した移住者の事例に触れつつ、二地域居住者のニーズや日田市への貢献分野を考慮し、既存の融資制度の見直しや新たな支援策を検討していく考えを示しました。
また、福岡県からのアクセスという日田市の優位性を生かした情報発信の強化や、子育て世代のニーズに応える未就学児の短期体験プログラム(こども園等)の検討、コワーキングスペースやシェアハウスといった住環境整備、そして二地域居住促進法に基づく「特定居住等支援法人」の検討状況についても質問しました。市側は、教育委員会との連携や、国制度の具体化を待って検討する方針を示しつつも、日田市がこの分野で出遅れないよう、先んじたチャレンジの必要性を訴えました。

文化芸術の振興:まちづくりの核として日田の魅力を再発見
 次に、日田市の長い歴史の中で育まれた伝統工芸や郷土芸能、そして豊かな自然が育む感性が、本市の魅力、ひいては地域ブランドを形成する上で重要な要素であるとし、文化芸術の振興について質問しました。文化芸術は単なる娯楽ではなく、人々の心を豊かにし、観光振興と結びつき、地域経済の活性化、さらには市民一人ひとりが郷土への愛着を育む上で不可欠な要素です。
 市長からは、文化芸術が持つ教育的、経済的、社会的機能(コミュニティ維持、多様な人々との交流による社会的包摂)への強いビジョンが示され、私自身の大学教授時代の研究テーマや個人的な活動経験(演劇参加、障害者アート展、市民ミュージカルなど)を踏まえ、文化芸術が個人の創造性を刺激し、多様な価値観の理解を促し、寛容性を育む役割を果たすと強調されました。また、日田市の豊かな文化芸術資源を、観光はもちろん、福祉、産業振興、地域振興など多様な部署と連携させ、障害者アートの商品化やクリエイティブ人材の誘致につなげたいとの考えが示されました。
 日田市民文化会館パトリア日田の運営改善については、指定管理者に対する定期的な評価と協議を通じて、市民サービスのさらなる向上と文化芸術への親しみを深めるよう求めたほか、多様な市民の芸術活動支援と機会の創出を質しました。特に、障がいのある方々が持つ独自の感性から生まれる障害者アートの支援強化や、未来を担う若者世代が文化芸術活動に主体的に関わる機会の創出を要望。市長からは、滋賀県や大分県の先進事例にも触れ、日田市でも新たな障がい者アートを生み出す環境を整備し、収入や発表の場へと結びつける支援を進める考えが示されました。また、日田青年会議所が検討中の若者世代による地域芸術祭(ブループリント会議)への取り組みについて、市長は「市民主体」を望ましいとしつつも、具体的な取組が定まれば市として連携を検討していく意向を示しました。
 文化芸術を通じた観光振興と地域ブランド化戦略について、市側からは、アートフェスティバルや演劇祭、音楽祭といった文化イベントが誘客の強い動機となり、SNSでの視覚的魅力がプロモーションツールとして機能するとの認識が示されました。今後は、文化振興と観光振興を一体的に進め、日田ならではの魅力の一つとして文化芸術を絡めた観光振興を目指す方針が示されました。

 今回の質問と答弁を通じて、日田市が直面する人口減少と地域活性化という喫緊の課題に対し、二地域居住による新たな人の流れの創出と、文化芸術を核とした多角的なまちづくりに取り組む姿勢が示されました。特に、市長部局への文化芸術業務移管後の連携強化、多様な市民の参加促進、そして地域ブランド化への戦略的な活用に大きな期待が寄せられます。
 私は、この質問を通じて、日田市が持つ可能性を最大限に引き出し、市民一人ひとりがささやかでも豊かな未来を築き上げていくことが大切だと考えています。
 引き続き皆様の声に耳を傾け、市政に反映させてまいります。