第2回日田市公共施設の再配置検討に向けた上津江・中津江地区の合意形成〈住民ワークショップ〉勉強会

2021年6月26日(土)、中津江ホールにて、
第2回日田市公共施設の再配置検討に向けた上津江・中津江地区の合意形成〈住民ワークショップ〉勉強会を開催しました。
主催:ひた未来まちそだての会(日田市淡窓町2-2-51ひたラボ 連絡 タカクラタカコ)
   中津江ホールを愛し生かす会(仮称 連絡役 藤原惠洋 ひたラボ助言者・九州大学名誉教授 建築学・まちづくり学・公共施設論・住民参画論)
進行役(ファシリテーター):藤原惠洋
議事録作成:タカクラタカコ

前回、6月19日(土)に引き続き、開催。

開催の背景と目的
・昨年開催した第1回自主的勉強会(住民ワークショップ)に聞き続き、中津江・上津江地区を対象に進展中の複数の事業「上・中津江高齢者福祉施設及びこども園整備事業」の経緯は、最も身近かな関係者のみならず、津江地区や日田市全体へ広がる課題として考えていく姿勢がたいせつ。
・昨年7月豪雨被災が重なった以降、それ以前から話し合いはあったが、災害復旧・復興から再建・移転への動きが加速した。
・事業主体の日田市は、地域の方々へ計画内容をわかりやすく説明し、理解を深める工夫をしてきたのかが、あらためて問われる。
・津江地区には、住民自治組織も生まれているものの、住民の方々の理解や納得や合意形成はどのように行われてきたのか、があらためて問われる。
・本日の住民ワークショップは、先週開催したものを基盤に、さらに継続して開催するもの。
 上津江住民の方々にもご意見を頂戴したいと考えた専門家の藤原惠洋先生が調査研究のいっかんとして助言される。
・今後もこのような自主的勉強会(住民ワークショップ)を継続して開催したい。

【1】今回の整備事業へ至る1990年代以降、日本国内での社会的経緯
【2】今回の出来事をめぐる経緯の整理(6/19第1回における情報をさらに精査した)
【3】自由意見交換
・まず【2】経緯に関して、本ワークショップ助言者であり公共施設、公共ホール建築学の専門家である藤原先生は「1案のみしか示さない提示では住民が検討する余地が限られ、是非の判断が単純化され誘導的に過ぎる」、「日田市側の計画では、すでに中津江ホールが解体されることが折り込まれてしまっているが、その理由が明示されていない」「中津江ホールの改修費が突如増額して示されたが内容的には盛り込まれすぎ、当初予算で十分ではないか」と指摘。

[上津江・中津江の住民の方々の意見]
・中津江地区・上津江地区の主要な土地はレッドゾーン、イエローゾーンになってしまった。
・上津江診療所も危険区域だが、裏に防護ネットがある。
・熊本地震の際、国道には岩が落ちた。昨年7月豪雨時には、敷地の被災のみならず、途中の道路が寸断されたことが辛かった。
・中津江地区691名・上津江地地区701名、はいずれも人口減少、少子高齢化、が進んでおり、住民自治と言われて問題を自分たちでどうぞ解決しなさい、と言われても簡単に取り組めるものではない。住民自治組織も、本来の行政サービスを肩代わりするものではないか、住民自治の限界が感じられる。
・中津江地区・上津江地区の高齢者福祉施設の統合・移転問題へ向けた住民合意が別々に動くことが問題、一緒に開いてくればよかったのにできなかった。
・新たな施設の建設配置に関して、中津江ホールは南北を長くする軸上に建てられているため、この敷地を生かして新施設を同じような配置にするなら、日照から見た場合、南側に窓を広くとる公共施設には不適切。
・中津江ホールは基礎がしっかり作っており、建物の高さが10m余り、それに対して長さが最大18mコンクリート杭を何本も地盤に打ってあり、基礎がしっかりしていると言えるが、その敷地の活用にあたっては注意が必要だろう。

[中津江ホール解体へどのような意見交換がなされてきたのか]
・中津江ホールの解体に関して中津江振興協議会から日田市長へ提出された「同意書」の中身を精査した。その結果、「なお、整備にあたって必要であれば、中津江ホールの解体や隣接する民有地の取得を検討すること」が確認された。
・以前よりコンサートに来ていた。しかし維持管理費はどうするのか?誰が運営していくのか。
・中津江ホールは日田市から年間200万円の維持費があるだけで、運営費用はない。
・ここが満席になるいイベントはほとんどなかった。プログラムの内容はいいけれど、お客さんが少ない。
・昨年7月豪雨時以降、高齢者を中心とした住民から「早く施設を作ってほしい」という声がたかまってきた。
・住民説明会での日田市からの説明はよくわからなかった。
・日田市は、A案(中津江ホールを解体)の他、B案(中津江ホールを残して活用する案)やC案・D案のようないろんな提案をしなかったのか。
・村民に余裕はない。残していく方法はない、残してほしいけれど維持費がかかる、自分たちでお金を出せるわけではないから何も言えない。
・住民説明会で中津江ホールの改修費用が7000万円と言われた。そんなにかかるなら、解体したほうが良いと思った。
・A案(中津江ホールを解体)以外に、B案(中津江ホールを残して活用する案)やC案・D案を展開する中、あらためて中津江ホールがあることで、アートとケア(老人介護やこども園)のマスタープランをつくることができる。全国にはすでに先導的・魅力的な事例がある。
・日田市の計画では被災前より良い施設ができるのか?
・解体には、建物の上家ばかり見ていてはダメで、地下に埋められた基礎部分が重要。この建物は高さが約11メートル。地下には地盤補強や耐震のためもあり最大長さ18メートルのコンクリート造の杭が多数打たれていることも大きな条件として見逃せない。

[中津江ホール解体計画以前からあった上津江地区・中津江地区の公共施設の再配置検討は?]
・今回の計画は、中津江ホールの解体以外にも、こども園や高齢者施設も居住棟とデイサービスについてどのようになっているのか、複雑でわかりづらい。
・今回の幼保計画は、今後も赤ん坊が減ること、子供が増えないこと前提とした統合と立替の計画にやむなく合意してきたが、最近の説明会では、こども園の施設規模も定員20名(先には30名と説明)と小規模化が進んでおり納得いかない。しかし前津江の折居ご夫妻が運営されている「おひさまとのはら」保育所は、入所希望者が前津江への移住まで展開中。生活環境さえ十分だと思えるなら、こどものための移住・定住は津江地区でも増える可能性があるのではないか。
・新しい施設があることで、近隣の小国町の利用者も期待できる。
・前回今回集われた方々以外の住民の方々の考えも知りたい。
・上津江・中津江合わせても人口が1400名を割るほどに減ってしまった。高齢化も進み時間がないという切迫感がある。

[あらためて中津江ホールへの思い]
・平成3年台風19号が襲った後、津江地区では甚大な風倒木被害があったが、当時の村長さんがたが台風の後の「希望のホール」として施設計画を担ってくれたもの。
・津江地区に住んでいるが、過疎の村は、市町村合併の頃からいろいろなものが無くなってしまっていくことに慣れてしまっており、小学校・中学校が無くなり、他の公共施設も無くなり、喪失感が大きいが、どこかで仕方がないと諦めている。そこから中津江ホールも無くなるのは仕方がない、と受け入れていた。
・今後も災害は続くだろう。それを前提にこの地に生きていくのだから、ここで生きていく工夫がたいせつだろう。そのためにも、この地での生き方や暮らし方を過ごす力を育てて、その力をさらにこの地へ還していくことが必要。中津江ホールが生み出す芸術や文化や交流は、そうした力をより高め、より活性化するものとして、次世代へ向けてもたいせつな役割を果たすだろう。

[公共ホール専門家の方々の意見]
・あらためて木造の「森のホール」としての中津江ホールを見たが、壊されるとは信じがたい、こんな特徴的なホール残すと良いのにと思う、皆でもっと使いこなせば良いのに、文化施設・芸術施設は心の拠り所としてとてもたいせつなものなのです、中津江ホールを上手に使いこなす、ここを殺すも生かす、も津江地方の住民次第ではないか。
・日田市中心地にできたパトリア日田と中津江ホールをもっと連携して使えばよかった。
・パトリア日田では、市民ミュージカルを創り上げたことが今も参加者や鑑賞客の中で伝説のように言われている。5ヶ月間かけ老若男女が一緒につくりあげた。喧嘩あり、涙あり、子どもたちの成長を見守ったり、お互いの絆が深まったり、いまだに交流がある。中津江ホールも事業取り組みが鍵だったと思える。
・誰が運営していくのか、と考えた場合、これまでは税金使って維持するのはたいへん、おもしろいアイデアを生かそうという担当者が不在、日田市行政より自分たちで管理しろと言われても維持できない、と消極的にならざるをえなかったが、どのような運営のしかたがまだあるのか、教えて欲しい。
・木質系の大ホールは音響時間が長めで響きが優れている。演奏会、コンサートやリサイタルといった音楽系プログラムだけではなく、演劇プログラムやダンス・身体表現系プログラム、手品・映画、じつに多彩なプログラムが可能だろう。
・文化の力がどれくらい地域社会を変えていくのか、外部資金や助成金をひっぱってくることから始めて実践してみたい。
・中津江ホールがやすやす解体されるのか、存続できるのか、は住民の方々が存続の希望をお持ちなら、そうした声を発していく「声のあげかた次第」ではないか。
・今日は専門家の先生の意見を数々聞くことができた。もっと前にそのような基本的な建物の情報や、中津江ホールの特徴、アートマネジメントの課題や、将来へ向けた文化ホールと連携したケア的公共施設の新たなあり方、などなど、たくさん学ぶことができたが5年前に知っていれば、今回の村民の話し合いや合意のしかたも変わっていただろう。

[運営の可能性に関する意見]
・運営に関しては財団法人地域創造や文化庁が全国へ公募を呼びかける外部資金の導入やクラウドファウンディング挑戦へ動いてはどうか。
・これまで中津江ホールがどのように利用されてきたのか、どのような歴史があるのか、ここで生み出されてきた村民交流とは何だったのか、を根拠資料(エビデンス)として活用すべき。
・極端な例だが、中津江ホールを残して生み出す新たな公共施設の中に、今の上津江診療所の役割を移すことだって考えてみれば良い。そうすることで、いよいよ、ケア+芸術・文化+医療+福祉+教育(次世代育成)などが相乗効果をなすことも夢ではない。

[話し合いの仕方、つぶやきを拾い集めることのたいせつさ]
・上津江の人口減少も厳しい中、20数年前から集落再編成を考えようとしても、すでにそれはできなくなっている。それでは今から30年後経てば、いよいよ無くなる集落も出てくる、危機感があるにも関わらず、住んでいる人はもうこのままで良いから、という人も多い。
・地元の声を聞くには、どのようにしたら良いのか?これまでは自治会長が地区住民の意見や考えを吸い上げるという方法や、代表者会議が通例だったが、年代・性別、職域などに偏りが生じた。そうすると全体の声の代弁になってきたとは思えない面もままある。むしろ今催しているような住民ワークショップのような集まりを通して意見集約をはかったほうが良かったのではないか。20代、30代の人たちにも必ず参加してもらうようにしていく、などの工夫が必要。
・先行した中津江むらづくり役場=中津江振興協議会ならびに上津江振興協議会はうまく運営できているのか、知りたい。
・すでに住民自治組織を設けた上津江・中津江の住民を対象とした中山間地地域振興の住民参加のありかた、合意形成の進め方について知りたい。
・まず地区住民の方々が、コミュニティセンター施設が生み出す公益性や公共性とは何か、を時間をかけ話し合う必要がある。管理運営もさることながら事業創出や積極的な活用を生み出し、外部の応援団との交流に関する工夫を見つけ出す必要があるだろう。
・住民ワークショップの話し合いの工夫は、①可能な限りみんなで情報を共有する、②参加する者の立場を上下関係は忘れて、できるだけ水平的な関係にしていく、③話し合いを促進する運営者の達人(ファシリテーター)を用意する、④一人が意見を言い、話す時間をあらかじめ3分などに決めておく、⑤話し合いの中では他の人の意見を否定しない、阻止しない、どんな意見も吸い上げる、⑤自分とは異なった、自分よりも面白い、自分よりも優れた他の人の意見にどんどん便乗していく、といったもの。本来の住民参加は、当て職で参加してもらうのではなく「この指止まれ」方式で関心がある方の参加からスタートするのが前提です。
・あらためて、上津江地区・中津江地区の一緒の話し合いがあれば良かった、と悔やまれる。今後その可能性はないだろうか。

【5】今後へ向けて
・前回に引き続き、3時間にわたる長丁場となりました。たいへんおつかれさまでした。
・14名の参加者の多くが発言をされ、活発な意見交換がなされた。
・第2回めの住民ワークショップのたいせつな目的であった複合化されてわかりにくくなっていた経緯の「見える化」や相互関係の明示化がおおむねできた。
・困難な課題を話し合う際に、参加者それぞれが本音で言い合うためには、第三者的な立場の進行役が必要だと認識できた、との声が多く出た。
・前回6/19(土)午後、中津江村を対象とした意見交換の中、「上津江の住民の方々の考えも知りたい」が聞かれたことから、今回の第2回目を継続して開催したが、おかげで上津江の方々のご意見を拝聴することができた。今後も継続しながら、同様の自由意見の場づくりがあると良い。
・さらに中津江ホールの音響の魅力を味わいながらの会合にしてはどうか、と提案があった。
・今後は中津江ホールのレンタル料金を参加者が出し合ってはどうか、と提案があった。