本日、令和3年6月定例会が閉会しました③

今回、私は、総務環境委員会に付託された、天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト事業について、委員会で審議し、最終日の採決の際、全額減額修正案を提出しました。
ここでは、この案に賛成した委員が3名で可否同数だったため、委員長採決となり、否決されました。
その他、一部減額修正・原案、それぞれ過半数に至らなかったため、それぞれ否決となりました。
委員会審査の最終日、私は、どうすべきか、考えました。

全額修正案を中野議員、中島議員により提案されました。
私は、本会議の場で「全額修正案に賛成」という立場で討論を行いました。
また、一部減額修正案も提出され、本会議では、委員会同様、

2款1項7目地域振興費 天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト事業
1,全額減額修正案
2,一部減額修正案(8月のイベント分のみ減額)
3,原案
の3つの案が採決されました。

以下は、私の討論の内容です。

議案第57号、令和3年度日田市一般会計補正予算(第2号)について、原案に反対し、10番議員・11番議員提案の修正案に賛成する立場で討論に参加します。

私は、原案に反対し、2款1項7目地域振興費 天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト事業 1,522万8千円を全額減額修正案に賛成するものであります。

 本事業は、昨年令和2年7月豪雨災害にて被災した天ヶ瀬温泉街の復興を推進するため、地域住民自らがまちの将来像を考え、その実現に取り組む組織として、本年3月末、設立した「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」の取り組みの一つとして、イベントを計画。そのイベント開催について、日田市が支援するための予算であります。

「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」は、20代から40代の未来を担う若者が地区や各種団体からの推薦を受けて、会のメンバーに就任しました。彼らは、自分たちのそれぞれ生業を復旧復興しながら、さらに、まちの将来ビジョンを策定するという、非常に重要な役割を期待されております。

天ヶ瀬温泉街の将来像について意見を出し合い、地域住民・事業者等の合意を得て「将来ビジョン・まちづくり戦略」を策定する、そのための予算は本年3月に令和3年度一般会計当初予算「天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト事業」として、天ヶ瀬温泉街復活ビジョンの策定・避難ルートマップ作成費用など合わせて、285万円の予算が計上され可決されました。

今回の令和3年6月定例会の補正予算で提案された「天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト補助金(1,522万8千円)」は主にイベントに対する補助となっています。

天ヶ瀬温泉街復興へ向けた将来ビジョンを地域住民みずから策定するための社会実験的なイベントして企画。事業については、本年3月から6月にかけて会議を行い、検討されています。
天ヶ瀬温泉街と川の共存が切り離せないことから、「川」をテーマに掲げ、8月1日から8日の一週間は、「天ヶ瀬温泉まつりウィーク」として、玖珠川にてカヌー体験やSUP体験、河川敷にウッドシェルターを設置し、ゆっくり過ごす空間の演出、また桜滝 ウッドステージでのヨガやその他ステージイベント、さらに11月から1月までの3ヶ月間は、「天ヶ瀬温泉魅力フェア」として、天ヶ瀬温泉に明かりをともすイベントや月2回のマルシェ、食べ歩き商品の開発などが企画されています。

 令和2年7月豪雨の被災後、自らも被災しながら、いち早く復旧に取り組み、地域住民を支えた天ヶ瀬温泉の若者たちを、日田市が支援したいと考えたものだと伺えますが、真の意味での復興への段階的な事業の必要性を考えたとき、自ら考え、自ら実践する能力形成がなにより求められます。そこから提案された各種イベントは今年度策定される「将来ビジョン・まちづくり戦略」に基づき実施されるべきものと考えます。

すなわち、イベントよりも先に、コロナ感染防止を的確に進める中、住民参画の復興事業をみずから創出し、みずから事業推進をすることができる有為(ゆうい)な人材育成を進めていくことが求められます。
*ここではあえて「ゆうい」。社会に役立つ、という意味。「うい」は、私たちが日々思案にくれながら生きる毎日のこと。

 そのうえで「将来ビジョン・まちづくり戦略」策定へ貢献する中、日田市や県が進める復興事業の市民協働の受け皿として活動しながら、一方で自分たちをエンパワーメント(元気付ける)していくための新たな生業(なりわい)の創出や活動を発展的に進めていくことが期待されます。

そのため、予算そのものを、「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」が最も効果的な使い方から喧喧諤々(けんけんがくがく)、検討していくことが必要となります。

まずは、様々なことを構想していくための話し合いの進め方をはじめ、地域住民の意見の吸い上げ方や意見交換の方法、出された意見ひとつひとつを丁寧にまとめ上げ合意形成し、将来ビジョンを策定する役割が果たせるよう、行政は、イベントの補助金を支援することではなく、専門家の派遣や情報提供、助言や適切なサポートが必要なのです。

3月末に設立した「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」の活動には、コロナ禍の影響もありますが、天ヶ瀬温泉街復興へ向けた住民参加の活動を通しての広がりや、誰もがそこに参加して力を発揮するという多様性や重層性が確保されていたとは言えません。

日田市では、これまで何度となく、復興や活性化、にぎわいの創出という名目で、イベントの開催が繰り返されてきました。しかし、本来、将来ビジョン策定に必要とされることは、一部の人たちだけで計画を進めるのではなく、一つ一つ丁寧に情報を開示し、一人でも多くの地域住民に関わってもらい、ともに天ヶ瀬温泉やまちの未来を語りあうことです。

私たちが期待する「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」の本来の役割や使命は、打ち上げ花火とも言える一過性的な消費促進イベントを主催することではありません。地域住民のみなさんをはじめ、昨年の豪雨災害以来、全国各地から被災地支援に駆けつけた関係人口とも言える方々をも含め、誰もが天ヶ瀬温泉街復興へ向けた住民参加の活動を率先して進めていく次世代活動体であるべきです。同じ予算を用いるならば、徹底して人材育成を推し進めるべきではないでしょうか。

日田市最大のお祭りである「川開き観光祭」や300年の伝統を誇る「日田祇園祭」は、新型コロナウィルス感染症防止を理由に中止されております。また、これら日田市主催のお祭りの予算は、それぞれ、「祇園祭」が約600万円、秋に行われる「天領祭り」が約1500万円、「千年あかり」が約300万円となっています。
それらのお祭りの予算との比較検討することや、住民をはじめ誰もが納得できる目的や理由が必要です。今回の「将来ビジョンを策定するために必要」「イベントの開催で元気づけたい」という説明では、すべての経費を日田市が負担しイベントを行うことには納得できません。

周知のとおり、天ヶ瀬温泉では、先行して元地域おこし協力隊員がみずから組織化した「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」が地道な活動を続け、被災した方をはじめ、多くの地域の方を元気づけてきました。「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」は、そうした基盤にたって、さらなるネットワーク型活動を生み出すものと認識しています。

しかしながら、先週末、6月26日(土)27日(日)に開催された天ヶ瀬温泉街復旧・復興に関する住民説明会冒頭に、集われた会場のみなさんへ向けて「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」の活動紹介がなされたものの、けっして訴求力のあるものとは言えませんでした。せっかく住民説明会用にスライド機材が用意されていたにもかかわらず、配布資料などの「見える」情報は用意されておらず、口頭で説明されただけでした。
こうした千載一遇のチャンスを用いて、地元や行政からの理解や支援を求めるには、それなりの工夫が必要です。そうして生み出された信頼や期待があってこそ、今回の天ヶ瀬温泉街復興プロジェクト事業が必要とする予算もおのずから認められていくのです。

被災から1年となる現在、被災から復旧した方もおられる一方、まだまだ再建が遠く、全く先が見えない不安を抱えている方もいる状況での、大分県による住民説明会において、今回初めて具体的な玖珠川の河川改修計画案の詳細が明らかとなりました。そこに示された計画案は、川幅を拡幅するもので、これまでの天ヶ瀬温泉街の景観とは大きく異なります。そしてこの改修工事への理解を深めるため、「大分県や日田市」と「地域住民」をつなぐ役割として、まさに「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」が必要であると、大分県より示されました。
この改修工事案が天ヶ瀬温泉にとって、一番適切であるかどうか、もっと他に良い案はないのか、景観や生業はどうなるのか、改修案をわからないまま受け入れるのではなく、不安や疑問を抱える住民に寄り添い、住民自らが考えるようにサポートする事、そこにこそ、「つなぐ会議」の役割が期待されます。将来にわたり継続的につなげることのできる計画、地域住民と今後の天ヶ瀬温泉街の在り方を丁寧に考えていく必要があります。

あらためて天ヶ瀬温泉街の復興は、観光客や温泉客以前に、一帯にお住まいになってきた住民のために必要と考える事業であるからこそ、日田市が掲げる「市民が主役のまちづくり」にある市民、議会、行政が一緒になって自分たちの地域のまちづくりを、自分たちで考え行動していくための基本的なルールを定めた「日田市自治基本条例」を基本に、市民参画では市民・行政が地域の課題と目標を共有し、それぞれの責任と役割分担について連携し協力することが重要です。

また行政の責任と役割として、執行部がコロナ禍でのスケジュールについて、予算は市民に分かりやすく可能な限り正確でなければならない原則からも、しっかりとした積算が必要であると考えますが、不明な点が多いままの積算資料となっていること。
予算計上までのプロセスにおいて、行政としての役割と責任が果たせていたのか疑問です。市民協働の観点からも、天ヶ瀬の復興に向けての取り組みには、行政の役割と責任は重要なポイントだと考えます。

今回の全額減額の修正案は、天ヶ瀬温泉街の復興及び事業実施を否定するものではありません。「天ヶ瀬温泉つなぐ会議」が地域住民とともに丁寧に将来ビジョンを策定できるよう、一過性的なイベント消費や一過性的な賑わい振興へ向けるよりも、議論を重ねる粘り強さを持った人材を育成する事業となることを望みます。

以上のことから、現段階ではこの予算をゼロベースに戻し、改めて、予算案を議会に提案すべきものと判断し、原案に反対し、天ヶ瀬温泉復興プロジェクト事業の全額削除の修正案に賛成するものであります。
議員皆様の御賛同をよろしくお願いいたします。

結果は、
2,一部減額修正案(8月のイベント分のみ減額)が10票(この日の出席者は議長を除く20名)だったため、可否同数となり、議長採決となり、この案が可決されました。