令和3年12月定例会 閉会 報告その1

本日、12月20日(月)にて、令和3年(2021)12月定例会が閉会しました。

先週、各常任委員会にて審議され採決された結果が本会議の場で、委員長により報告されました。
各委員長からの報告があったあと、それに対しての質疑が行われます。
委員会での議論はどうであったのか、どのような意見が出たのか、などが問われます。
その後、採決に対して反対がある場合の討論が行われます。
今回、教育福祉委員会の結果に対して、反対・賛成それぞれの討論が行われました。

私は、今回上程されたうちの議案第79号「日田市中津江ホールの設置及び管理に関する条例の廃止について」および
議案第88号 令和3年度日田市一般会計補正予算(第7号)に反対の討論を行いました。

以下、討論内容です。

議案第79号「日田市中津江ホールの設置及び管理に関する条例の廃止について」および
議案第88号 令和3年度日田市一般会計補正予算(第7号)に反対討論を行います。

今回の反対は、日田市中津江ホールの設置及び管理に関する条例の廃止と予算のうち、3款3項4目公立保育園費 公立教育・保育施設整備事業 中津江ホール解体のための実施設計委託料190万について、反対するものです。

中津江ホール解体実施設計委託料は、本年3月定例会において、教育福祉委員会では、
関連事業の全額修正案と事業のうち一部、中津江ホール解体工事設計委託料と用地購入費用を減額する修正案が提出され、賛成多数により一部減額修正案が可決されました。

その際の委員長報告では、「各施設の整備後には新たな活用も期待されることなどから中津江ホールの解体は白紙とし、併せて用地購入については明確な計画がない上、市有地全体の活用も検討できるとして、中津江ホールの解体工事設計委託料の160万6,000円及び用地購入費の770万6,000円の計931万2,000円を減額するものです。」と述べられました。

当時、私も所属していました教育福祉委員会における審査、さらなる本議会の議論・討論を議事録を通して振り返りますと、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の意見が発せられており、この3月議会の時点では、中津江ホールを解体しなければ事業全体が進捗しない、というような強硬な意見は、当時の議員のどこからもその声はあがっていなかったことに気づきます。

曰く(いわく)、
ゼロベースに戻し、地域とのしっかりとした対話を経て、地元との協議を整えた後に改めて予算案を議会に提案すべき。

曰く(いわく)、
住民の意見を集約する際、中津江ホールは存続できないかという意見があれば、中津江ホールの価値について再検討し、改修費、維持管理費をもう一度精査し、事業計画を立て、分かりやすい住民説明が必要である。

曰く(いわく)、
このエリアが総合的な福祉エリアとなれば、それぞれの施設と連携し、利活用が促進されることは想定されるが、その観点からの協議がされていない。中津江ホールの廃止は白紙に戻し、今後の活用策を基に検討すべき。

曰く(いわく)、
ホールを存続した場合、改修費用が必要となるが、施設維持費を含め、複合施設のエリアとなることを含め、地域住民の思いを参酌(さんしゃく)すれば、解体撤去にはならない。

など、実に様々な意見が出されましたが、それは新たな公共施設群の建設事業を一刻も早く進めたいと願う地区住民や議会の立場を反映させたものと言え、その前提として中津江ホールの敷地を文句を言わず供出せよ、とは誰も言ってはいなかったのです。

しかし、3月議会が終わって以降、4月から11月になるまでの8ヶ月間にわたり、市の担当部署はいったいどのような場を用意して、地域住民の思いに寄り添いながら、わかりやすい情報開示と情報共有を旨とした住民説明を粘り強く重ねてきたのでしょうか?

中津江地区では6月の住民説明会、その後の代表者会議にて協議を進めたとされていますが、計画に対して、意見がある、もっと良いものを作るために意見を聞いてほしいという声は、「代表者」とならなければ、意見を発する機会はありません。

私たちの日田市は全国にも誇り高いフルスペックとも言える日田市自治基本条例を有する自治体ですが、そこには市民主体のまちづくりを標榜するため、その前提となる情報公開と情報共有を進めていく必要があることを指摘しながら、市民参画と市民協働をうたっています。

しかしながら4月から11月になるまでの8ヶ月間にわたり、市役所担当部署内部での「検討」という名のもとの内部協議ばかりが一人歩きしていたことが、最近、教育次長の答弁によって判明してきました。

こうした内部協議のみだけで粛々と事業計画を進める古めかしい手法は、日田市にとっての最高規範とまでうたわれた日田市自治基本条例に示された情報公開と情報共有を前提とした市民参画や市民協働をまったく度外視するものであるとさえ言えます。
教育、福祉、文化などにひときわ関心のある市民を招き入れて、多彩な意見を反映し、複数の事業計画を立案していけば、市役所内部で閉じた努力をされるよりも、もっと優れた計画を生み出す機会となった可能性すらあります。

さらにこうした参画の場づくりこそ、日田市が「自治基本条例推進事業」などで進めてきた、人材育成や市民意識の醸成、自治意識を涵養する千載一遇の事業参画チャンスであったとも言えたのでしょう。
しかし、市役所担当部署だけでの内部での「検討」は、関心を傾ける熱心な市民さえをもいっさい近づけずに、自分達だけで「検討」を重ねて結論を出したのだと教育次長は何度も答弁を重ねておられました。

こうした市役所内部で閉じた整備事業計画策定は、ひと時代も、ふた時代も前の行政手法と言えます。

11月13日に開催された中津江地区住民説明会の場において、高齢者福祉施設を単なるハコモノとして計画するのではなく、福祉ビジョンを丁寧に打ち立てながら施設の内容を実現させる必要があるという意見がありました。
福祉も教育も選ばれるものとなっていく時代になっていると指摘されていました。

また小さなお子さんをお持ちの方なら強い関心を持っておられる前津江の「森のようちえんおひさまのはら」は、じつに魅力あふれた保育と教育のプログラムで知られています。17名の定員がすべて埋まっており、関東圏からも見学に来られることが多く、実際にこの幼稚園に入園するために移住した方もおられます。
子どもたちを豊かな前津江の自然の包容力の中で育んでいくというプログラムが、じつに優れたものとなっています。

こうした事業を肉付けする内容に関しては、市役所担当部署の担当者や関係者だけではなく、専門的に仕事を積み上げてこられた市井の方々の力を生かさない手はありません。

今回の整備事業計画は、よくよく見ていけば、かねてより行政が冒してしまってきたハコモノづくりの公共事業と同様に進められています。
私は、中津江ホールを残しながらも十分に新たな施設計画が可能である、と集ってきた複数の専門家から、市役所が示す事業内容への疑義や質問もいただいてきたため、いくつかの難点を指摘することができます。

曰く(いわく)
間取りが東西に長く伸びる高齢者福祉施設には中廊下の南側に面した部屋だけではなく、北側にも4つの個室と1つの二人部屋が計画されているが、年間雨量が日田市内より1.5倍も多い中津江地区は湿度も高く、冬の寒い季節には北側部屋の壁や窓開口部に必ず結露が生じる。なぜ北側に部屋を設けなければならなのか。

昨年夏の豪雨で被災した高齢者福祉施設などの教訓から、現在では同等の施設は必ず一部二階建てとして垂直避難に対応できるように工夫をすることが始まっている。もともと階段状になった敷地の高低差を考え設計に反映していけば、緩やかなスロープで処理することができる。しかし、今回の計画は、あえて平家建としている。平家建にしたため、無理が生じ、北側の部屋が計画されたとすれば、一日中、陽当たりも悪く、陰湿な北側の部屋をあえて選ぶ入居者はいるのだろうか。また二階建てとすれば、敷地面積を減少させることもできる。

ちなみに執行部は、平屋建ての理由として、二階建てにするとエレベーターが必要となる。その分の経費が必要になるため、と説明しています。

曰く(いわく)
一方、サンサンとした太陽光を求めるこども園も、計画案では、現在の中津江ホールが立地する南北に長い敷地からの影響を組み入れてしまっており、南北に長い配置となっている。朝日や午前早めの太陽光は期待できるが、途中から光は届かなくなり、午後は強い西日が入ってくる計画と言える。

さらに、その東側に設けられる予定の園庭は、現在の中津江ホールの建築面積を前提とした配置の計画だが、もともとこの敷地は造成されて生み出された人工台地であるため、中津江ホールの荷重を支え、造成地の東端(ひがしはし)を堤防のように支える支保工(しほこう)として、深さ19メートルにもおよびコンクリート製の杭がのべ47本地面に打ち込まれている。中津江ホールの解体工事で、このコンクリート杭を抜いてしまうというような無駄な工事はないと思われるが、園庭や菜園は、目に見えないコンクリート製の杭47本に支えられた荷重なしの不思議な地盤となる。

このように、今回の整備事業の問題点が見えますが、どれほどの複数案と比較検討し、問題点を含めて代表者会議で丁寧に説明し、理解してもらい、そのうえで意見を積み上げてこられたのでしょうか。

中津江ホールを愛する会が本年8月10日、日田市長へ提出した要望書では、中津江ホールを解体するにいたった経緯、その際の「検討を重ねた結果」の検討内容を明らかにしてほしい。と強く要望したものの、2ヶ月後に届いた回答では、「検討を重ねた結果、併存は困難であり、解体する判断に至る」というものでした。

本12月議会の一般質問に対しても、教育次長は、中津江ホールの利活用についてどのような議論がなされたのか問われた際、「検討しなかったのではなく、検討する状況になかった」と答弁しています。

解体を決定した経緯も、「検討を重ねた結果」の検討した内容も、明らかにされないのではなく、「検討する状況になかった」、これは「検討していない」ということです。

あらためて、執行部は、議会に対しても、市民に対しても、市民参画・市民協働を生み出す上で欠かせない情報公開をまったく対応しないどころか、3月以来の内部協議の過程をいっさい顕示化してこなかった態度は、実に不誠実であり、民主主義の原理原則に反する情報の内部秘匿であったと言わざるを得ません。

さて、なによりもたいせつなことは、今回の整備事業は、令和2年7月に被災した中津江の安寿苑再建であることから、一日でも早い計画・実施です。
そうした再建事業へ向けて反旗をひるがえすものではありません。
もちろん、計画をむやみに長引かせたり、住民の安全安心な生活を脅かしたいわけでもありません。

5~6年前から協議をしてきたと市長は答弁されておりますが、この計画をどれくらい丁寧に情報公開・情報共有してこられたのでしょうか。
災害が発生し、急遽、場所の再検討が必要となり、中津江ホールを含むこの敷地は安全そうで良いじゃないか、と発見されたということになりますが、そのような施設への新たな公共福祉施設の計画ならば、税金の有効活用や、公共性・公益性を担保するためにも優れた計画である必要があります。そのためには、少なくとも複数の選択肢を比較しながら検討していくことが常識でしょう。
そのうえで、自分も一枚噛みたい、と手を挙げるような意欲的な市民がいればどんどん介在していただき、優れた計画案へ練り上げていけば良いのです。

だからこそ、今回の整備事業について、まず初めになすべきは、より深く理解するためにこそ、あの場所がどのように生み出されたものなのか、ということや、1994(平成6)年にできた中津江ホールが当時どのような意味を持ち、計画されたのか。それを把握する必要がありました。

あわせて、今回の新たな公共施設の設計内容について、可能な限り、調べていくことがたいせつでした。
そのため、当時の計画を知る方や様々な専門家に助言をいただき、資料を集めました。

そのうえで、中津江ホールが背負わされた大きな課題が判明したのです。
中津江ホールは、文化施設に分類されておりますが、現在は日田市公民館運営事業団が指定管理しており、中津江公民館の付帯施設として管理されています。その際、わずかな公民館スタッフがホールの管理や運営を任されており、長らくそこには専門性の高いホールマネージャーやアートマネージャーが不在していた、ということです。

したがって、公共文化施設を3000館以上も束ねる全国公立文化施設協会が率先して行うアートマネジメント研修講座を受講し、専門スタッフを人材育成するという計画はありません。ホールの事業企画づくりや広報・宣伝・情報化への戦略設定はおろか、電気・照明・空調機などを対象とした安全管理マニュアルづくりや、利用者の顧客管理すら行われてはいませんでした。いわば公民館が、貸し館依頼を受け、管理運営的な仕事をしていたにすぎない、と批判されてもしかたがない状況だったと言えます。

中津江ホールが日田市の文化芸術振興の中心的役割を担う日田市民文化会館パトリア日田と連携し合って演奏会、公演、集会、生涯学習企画などをもっと積極的に展開するには、なにより専門性の高いホールマネジメントの発想や実践が無さ過ぎたと振り返らざるを得ません。
そのような中で「利用者が減少した」ことを解体理由とするのは、納得できません。
これまで日田市教育委員会が適切な運営計画を行っていなかったことと矛盾しているからです。

そのうえで、中津江ホールが存続され、積極的な活用を市民団体や市民組織が司ることができるような機会がもたらされるなら、なにより中津江公民館の付帯施設から外していただき、新たにNPOや任意団体による指定管理を試みていくべきであると考えられます。
さらに、
その指定管理委託を人口減少が進む地域のみで行うのではなく、外部人材を受け入れ、大学・企業・市民団体・音楽家や劇団など多様な方たちと連携をとりながら管理運営を行っていく、といった発想が、さらなる人材育成・市民意識の醸成につながる千載一遇のチャンスでもあるのです。

以上の理由により、議案第79号「日田市中津江ホールの設置及び管理に関する条例の廃止について」および
議案第88号 令和3年度日田市一般会計補正予算(第7号)に反対いたします。